再び、富山市に5か月の長期出張となり、最初の土曜日。
仕事の休みが取れ、天気は春の晴天を約束してくれている。
行先は決まっていた。
白山山系の野伏ヶ岳である。
でも、野伏ヶ岳だけではもったいないので、
その奥にたたずむ真っ白な山容の薙刀山も
一緒に登って周回してみようと考えていた。
3月28日、白山中居神社をAM5:15出発。
神社の回りを見渡すだけでも今年の雪の多さが伺える。
5分ほどで除雪終了地点。
ここからスキーを履き、シール登高開始とする。
まだうす暗い林道を進んでいく。
東の空が赤く染まってきた。
今日はいい天気になるかな。
GPSを確認しながらトレースにならい林道をショートカットし、
AM6:30 牧場跡地に到着。
少し雲が多くなってきたようだ。
予報では晴れなんだけどなぁ~
野伏ヶ岳の右側には今日のもう一つの目的の山、薙刀山も良く見えている。
ここの風景は大好きな場所のひとつ。
緩やかな丘陵地帯が雪原となり、
その周囲には野伏ヶ岳がそびえているのである。
しかし、残念なのは無残に刻まれたスノーモービルの跡。
牧場周辺を縦横無尽に荒らしてくれている。
牧場跡からダイクレ尾根に取り付く。
湿原地帯などがあるが、なるべく標高を落とさずに尾根に登る
ルート取りがポイントだ。
まだ曇り空なので斜面はカリカリの状態でクトーがよく効く。
AM7:30 ダイレクト尾根に登り上げた。
ここからは山頂が遠くに見える。
南斜面は先日の雨の影響だろうか、縦溝を多く出来ている。
気温も上がり、雪面が緩くなってきたので、クトーが効きにくい。
急斜面ではジグを切りながら登高していく。
登ること1時間、ジャンクションピークが近くなり、見上げる先は
小さく出た雪庇があるようだ。
あの雪庇を越える箇所はスキーを履いた状態では困難なようなので、
スキーを脱いでアイゼンを装着しようとザックを下す。
ザックから荷物を取り出そうとするがアイゼンはあいにくザックの底。
手前のものを出してごそごそとしているその瞬間、
「しまった~!」
なんと食糧を入れた袋がシールの袋と一緒に急斜面の雪面を
滑り落ちていくではないか。
止まらない・・・・
標高差にして150m近くは落ちていったであろうか。
しかたない、スキーを履いて滑り降り、また登り返すしかない。
ザラメ雪状態の南斜面をひと滑りし、食糧を回収。
再び登り返し、今度は平らな個所でスキーを担いで登高開始。
1時間のロスタイムである。
雪庇を越えて、ようやくほっとする。
AM10:00 山頂到着。
1時間のロスをしたが、まだ時間は早い。
薙刀山までは2時間も掛からないだろう。
薙刀山とのコルまでまずは滑り下りる。
北側斜面はカリカリながらも楽しい時間。
つかの間の滑りを楽しんだ。
薙刀山へ続く稜線が良く見える。
ふたたびシールを装着し、稜線を歩いて行く。
シールを双装着したり、剥いだりするこの行為、
面倒くさいが、これがスキーツアーの醍醐味でもある。
のんびりと周囲の景色を楽しみながらのシール登高。
静かな春山の時間が流れている。
山頂近くで牧場跡からダイレクトに登り上げてきた7人ほどの
グループが見えた。
後でわかったのだが、名古屋のYTさん達であった。
AM11:25 薙刀山
野伏ヶ岳を振り返る。
先ほどのグループに加え、同じく稜線を歩いてきた方たちも加わり
山頂は一気に賑やかになった。
山頂からは別山とその向こうに白山の白き頂が最高にカッコイイ~
西には先日登った荒島岳。
遥か南東には噴煙を上げる御嶽山、そして乗鞍岳。
いつの間にか見上げる空は快晴となっていた。
そんな最高の景色に、コーヒーを飲みながら
30分以上も休憩してしまった。
そろそろ降りようか。
先に滑りおりたYTさん達7人グループは東尾根沿いに行ったようだ。
私は広大な南東斜面を滑る。
厳冬期なら最高のパウダー斜面だろうけれど、
今日はグサグサの腐れ雪。
それでも最高の瞬間なのである。
薙刀平と呼ばれる辺りをのんびりとスキーを滑らせ、
この後はなるべく標高を落とさず牧場跡を目指す。
ここにきて脚の疲労が重なってきたようで、
ふたたび15分ほどの大休止。
牧場跡では10人ほどのグループがテン泊の段取り中。
一度はここでテン泊をしてみたいもんだ。
振り返る野伏ヶ岳、いつの間にか快晴の空が広がっていた。
中央ルンゼにもシュプールが刻まれているようだ。
あとはヘロヘロになった足を休み休みしながら
林道を惰性で滑り降りて、
PM1:50 白山中居神社へ無事下山。
一度やってみたかった野伏~薙刀山の周回ルート。
次は冬期にチャレンジしよう。
今回の最大の失敗。
急斜面でザックを下した時に、
しっかりとバケツを掘らなかったこと。
大切な装備を落としてしまうことは時には遭難となることを
肝に銘じて、またひとつ経験を積んだのであった。
おまけ
帰り道、常願寺川から立山連峰のアーベンロート
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