聖岳から悪沢岳へ 南アルプス南部大縦走は厳しくも美しい稜線だ

Tekapo

2016年08月14日 12:30

南アルプス 富士山を日本一近くで見られる標高3000mの稜線へ




 
photo 悪沢岳・千枚岳の稜線越しに見る富士山




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8月5日~7日、南アルプス南部を縦走してきた。

同じ南アルプスでも北部と違って南部はアプローチの悪さ、

限られたアクセス方法など条件が悪く、

私の中でも優先順位が低いものであった。

それは私以外の登山者も同じことであろう。

しかしそれは逆を返せば人が少ないかもしれないということ。

これは私の想い描くスタイルに合う登山エリアなのかも知れない。

私の回りでも南アルプス南部の素晴らしさを語る人が多くいる。

山としての魅力はどこにも遜色はないのである。





コースタイム等はヤマレコの記事を参照ください。




≪第一日目≫

大阪から新東名高速・島田金谷ICまで280km、

そして大井川沿いに100kmの距離を計6時間掛けて着いたのは

畑薙第一ダム臨時駐車場である。







ここから東海フォレストの椹島行きのバスに1時間ほど乗るため

バス乗り場で並んでいると突然目の前に人が立ち、

「tekapoさん!!」

と私の名を呼ぶ声にびっくりする。

最初、逆光で顔がわからなかったが、そこにはまさかのYちゃんの顔があった。

彼女こそ私に南アルプス南部の素晴らしさを説いてくれた人であった。

そんな彼女との偶然の出会いの余韻を抱いたまま、バスに乗り込む。

聖沢登山口で途中下車し、針葉樹に覆われた登山道を歩き出す。





今日の目的地・聖平までは標高差1300mほどだ。

トラバース道、吊り橋を過ぎて、次第にコースは勾配を増していく。













久しぶりの20kg近いザックの重量に大汗が噴き出す。

針葉樹林帯を抜け、やがて森は広葉樹へと変わっていく。

晴れていた空もいつのまにか雲に覆われ、雨が落ちてきた。

やがて沢沿いのルートになるころには勾配も緩くなり、

午後1:00過ぎ、聖平へと着いたのであった。








テント場は小屋のすぐ近くでなかなかいいロケーションだ。

小屋でテント泊の手続きを済ませ、とりあえずのビールを購入すると、

「フルーツポンチがあるからどうぞ召し上がってくださいね~」

とのお言葉をいただく。

振り返るとなんと寸胴に一杯入った色とりどりのフルーツポンチがあった。

汗を掻き、疲れた体には最高の心遣いのこもったサービスだ。








テントを張り、ビールとフルーツポンチを堪能する。

時折雨も降るが、明日は間違いなく晴れるさと、

午後の時間を本でも読みながらゆっくりと過ごすのであった。














≪第二日目≫


午前2:30 聖平を出発。

今日はコースタイム13時間弱の長丁場だ。

聖岳、赤石岳と百名山2座を踏むことが出来るが、

3000mを超える稜線と300~500mを超えるアップダウンが

繰り返される厳しい一日となるだろう。

聖岳への標高差700mをなんとか登りあげ、ご来光に間に合った。




















目の前には今までのどの山頂から見てきたのよりも大きな富士山があり、

赤く染まった東の空に丹精のとれた裾野をもつシルエットが浮かびあがっていた。






聖岳を後にし、ここから本格的な南ア大縦走が始まる。








早朝ということもあり、前後には誰もいない。

これぞ私が望んでいた縦走スタイルだ。

斜光を背中一杯に浴び、花咲く登山道を一歩一歩手繰り寄せる。

兎岳の手前で一人の妙齢の女性と出会う。

te「今日はいい天気になりそうですね。」

すると彼女は

「私、月曜日から山に入っているのだけど、昨日まで5日連続で

雨に降られたの。今日は一日中晴れてくれるかなぁ~」と。

笑顔の向こうに雨に苦労した様子がなんとも印象的であった。








兎岳、小兎岳、中盛丸山を越える。







ルート沿いに咲く高山植物が美しい。

ウサギキク






チングルマの果穂







赤石岳とシナノオトギリ







振り返れば聖岳の勇壮な姿







大沢岳の北側コルの下に百間洞山の家がようやく見えてきた。








背中のザックが重く圧し掛かり、足が思うように上がらない。

繰り返されるアップダウンに疲労が溜まっていくのがわかる。

そして一向に縮まらないコースタイムに少し焦りを感じたのである。

午前9:30 百閒洞山の家に着いた。









小屋のお兄さんに聖平から荒川小屋までの行程だと伝えると

激励をもらい、さらに買い求めたジュースに少し活力を得る。

百閒平へ登りあげると目の前には赤黒い斜面をむき出しにした

赤石岳の雄姿が飛び込んできた。

















しかし、ここからさらに500mの標高差があるのだ。

ガレたルートを喘ぎながら、それでも少しずつ足を進める。










相変わらずの独り占めルートに歩みの遅さに気を遣わないのが幸いだ。

ジグザグの登高を何度繰り返しただろう、赤石岳避難小屋が見えてきた。

そしてその左前方には3120mの赤石岳山頂が見える。






あそこまで登ればもう今日はこれ以上の登りはない・・・あと少し。


午後0:30 赤石岳山頂だ。







やっとここまで来れた。

一時は荒川小屋を諦め、赤石岳避難小屋に泊まることも考えていた。

午後から湧き上がってきたガスに夕立の懸念も加わっていたからだ。


赤石岳登頂の感動を噛みしめ、最終目的地・荒川小屋を目指す。

ここからは道行く登山者も増え、表銀座並みの人の多さだ。

小赤石岳からは残りの行程である大聖寺平、荒川小屋が見える。










なだらかな稜線である大聖寺平の向こうには

その名の通りの「悪沢岳」が荒川三山の最奥に控えていた。

大聖寺平からのトラバース道を辿り、今日の小屋・荒川小屋に着く。










このエリアは東海フォレストの経営する小屋が幾つかあり、

同社のバスの利用券を小屋へ提示し、その分(¥3000)を差し引いた

宿泊料を支払い、そしてその領収書が帰りのバスの

乗車券(整理券)と引き換えになるというシステムなのだ。

前日の聖平テント場で聞いた話だと

荒川小屋は2畳に3人という混雑ぶりだという。

しかし話はそこで終わらない。シュラフを持っていれば

素泊小屋を利用してもいいというのだ。

受付で食事の希望時間を申し込み、素泊小屋での宿泊が可能か聞いてみる。

返事は快くOKであった。

素泊小屋へ入るなり降り出した夕立。絶妙なタイミングに幸運さに感謝する。

結局、素泊小屋は私を含め6人。広々快適の一夜を過ごせそうだ。

小屋での夕食を済ませ、就寝までを同室?の5人と少しのお酒と山のお話。

いい夢が見れそうだ・・・・








≪第三日目≫

午前5:00 荒川小屋を出発。










赤く染まる東の空に富士山のシルエットが美しい。


振り返れば赤石岳の姿










しばらくすると山の斜面は一面の高山植物に覆われてきた。
















知る限りのあらゆる高山植物が咲いているという

豪華絢爛状態に狂喜乱舞してしまう。

昨日までのルートでもたくさんのお花畑を通ってきたが、

ここの素晴らしさは一番だ。

先を急ごうとする背中を強く引っ張られるのも今ばかりは仕方ない。






荒川三山の中岳あたりからブルーのシャツを着た登山者(以下 Bさん)と

前後しながら歩くようになる。

中岳からは荒川岳のピラミダルなシルエットと

その向こうに浮かぶ富士山が美しい。














荒川三山の最高峰・荒川岳、別名・悪沢岳に着いた。









ここからは塩見岳、そしてその向こうには甲斐駒ヶ岳や間岳、

農鳥岳の山並みが手に取るように見える。素晴らしい景色だ。











悪沢岳を下り、丸い尾根が見えてきた。丸山だ。








どこかで見た景色、そうだ北アルプスの双六岳だ。

あそこでは槍ヶ岳の穂先が丸い尾根の先に見えていたが、

ここ丸山は富士山が向こうに見えているのである。

最高の眺望の中を歩いていく。

千枚岳の手間の素晴らしいお花畑に急ぐ足を引き留められる。













Bさんも同じくカメラ撮りに忙しいようで二人して足止めを食らう。

千枚小屋からは樹林帯に突入し、一気に歩くペースも上がってきた。

水分補給や給水の度に何度もBさんと前後しながら、

それでも長い道のりをいいペースで下っていく。

そして最後は一緒に椹島へと降り立ったのであった。













椹島は北アルプスの上高地のような場所と言われるそうだが、

登山者しかいないこの場所は、私的には徳沢の雰囲気だなと思う。

バスの時間までのひと時をBさんとランチをご一緒願う。

午後1:00のバスに乗り込み、今回の山行は終わりを迎えるのであった。


振り返れば、辛く長い二日目の縦走も南アルプスの壮大な景色と

美しいお花畑に包まれ充実した一日であった。

荒川小屋での一夜、一番高く近くで見る富士山、出会った多くの人、

その全てが辛かった行程を楽しい思い出に変えてくれたのであった。

素晴らしき南アルプス南部の稜線。そしていずれはこの稜線を

悪沢岳から見たあの北側の稜線につなげたいものだと思うのであった。


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